プリ・アルスエレクトロニカ2010の審査の概要
1987年の創設以来、国際的メディアアートのコンペティションであるPrix Ars Electronica(プリ・アルスエレクトロニカ)は、アート、テクノロジー、社会との接点において クリエイティブなプロジェクトをターゲットとし、それらをデザイン・実装する人々にあらゆる学問の分野を超えたプラットフォームを提供しています。
プリ・アルスエレクトロニカは、Ars Electronica Linz GmbHとオーストリア国営放送上オーストリア局の主催のもと、 OKセンター(上オーストリア州立現代美術センター)とブルックナーハウス・リンツの協力を受けて実施されます。 表彰式は毎年アルスエレクトロニカ・フェスティバル期間中に行われます。プリ・アルスエレクトロニカはデジタルメディアにおける 世界で最も重要なコンペティションのひとつといえるでしょう。
プリ・アルスエレクトロニカでは、青少年部門コンテストを含む7つのカテゴリーの作品を募集します。 70カ国以上から国際的に著名なアーティストが参加し、現代メディアアートの最新トレンドを測るバロメーターとなっています。
1987年から今日までに応募された作品総数は42,245点にのぼり、2010年度の賞金総額は117,500ユーロと世界のサイバーアートの 賞としては最高額となっています。ゴールデン・ニカ(最優秀賞)6点、優秀賞12点、入選70点、またネクスト・アイデアにおける助成金が各受賞者に授与されます。
メディアアートはダイナミックに変化を続ける分野であるため、社会的、技術的発展に応じて各カテゴリーは常に見直され、 新しいニーズに応えるべく調整されつづけています。
プリ・アルスエレクトロニカは下記の7つのカテゴリーからなっています
* コンピューターアニメーション/ Film / VFX
* インタラクティブアート
* デジタルミュージック&サウンドアート
* ハイブリッドアート
* デジタルコミュニティ
* u19 – フリースタイルコンピューティング
* ネクスト・アイデア助成金
作品募集期間は毎年12月から翌年3月の締め切りまでです。世界各国から集まる審査員が各カテゴリーの受賞作品を4月に選出しました。
黒川良一さん
GOLDEN NICA DIGITAL MUSICS & SOUND ART 受賞
作品タイトル rheo: 5 horizons
URL http://www.ryoichikurokawa.com/
email info@ryoichikurokawa.com
作品紹介と解説
5 plasma display + 5ch sound installation 2010 8 minutes loop
5つのフラットパネルディスプレイと5つのスピーカーによるインスタレーション。
5つのスピーカーとディスプレイの音と映像はそれぞれ対となって同期し、5体の映像を持ったオーディオ装置となっている。それぞれの映像のふるまいは音の位置や方向、運動を示している。アシンメトリーな音と映像の動きが8分間のループする周期の中でリズムを作り、共鳴、調和を創り出す。
タイトルにある"rheo"とはギリシャ語の"流れ"を意味し、自然の規則に則って変化を繰り返す現象を示している。中央に位置する地平線ラインは持続音と同様に均衡と安定を与え、点と線によって構成された映像は音の動き、かたち、質感、色、伸縮性などの特徴が共感覚的に持っているイメージの表象となっている。
プロフィール
アーティスト。ブリュッセル在住。音と映像によるコンサートピースやインスタレーションを展開している。フィールドレコーディングとデジタル生成された音と映像の建築的コンポジションを形成し、時間の彫刻を再現する。近年はTate Modern(UK)、Ars Electronica(AT)、Transmediale(DE)、Sonar(ES)を含む多数の国際的な美術館やフェスティバルに招待され作品を発表している。
- プリ・アルスエレクトロニカの今回のご受賞について、一言お願いします。
- 誠に光栄です。
- 今回の受賞作品は何にインスピレーションを得たのでしょうか?
- 今回のみに限らず、自然からは常に多くのインスピレーションを受けています。このインスタレーションではそれに加えて、"panta rhei"ということばからも受けています。元々は"Rheo"というコンサート作品があり、それをインスタレーションバージョンとして発展させたものがこの作品です。
- 作品制作において、テーマにしていることはありますか?
- 自身の作品を体感してもらう際に新しい感覚、アイデア、経験を生み出すきっかけを創っていきたいと考えています。
- アルスエレクトロニカはアートとテクノロジーと社会の融合領域における新たな表現を追求しています。あなたの作品とそれらの関係についてどのように思われますか?
- 新しいテクノロジー、メディア、ネットワークの発展はアートにおける新しい表現を可能にしています。自身の作品を創造する上でも、これらの新しいテクノロジーは作品を制作する上で大きく表現の視野を広げてくれます。また、これらの技術によるアート領域でのアイデアは、人間の知覚、感覚、コミュニケーション、社会に多大なインパクトをもたらす可能性を持っていると信じています。
梅田宏明さん
HONORARY MENTIONS DIGITAL MUSIC & SOUND ART 受賞
作品タイトル Adapting for Distortion
URL http://hiroakiumeda.com/
email contact@hiroakiumeda.com
作品紹介と解説
ダンスが視覚で観賞されるのであれば、視覚それ自体を刺激することで、ダンス自体が変容してしまう可能性があるという考えから、錯覚をコンセプトにダンスの可能性を視覚的なアプローチから模索した作品である。
プロフィール
1977年東京生まれ。 日本大学芸術学部写真学科中退。2000年より創作活動を開始し、「S20」を発足。2002年に発表した 「while going to a condition」がフランスのRencontres Choregraphiques Internationalsのディレクターであるアニタ・マチュー氏により、「若くて有望な振付家の誕生である」と評価され、同フェスティバルで公演。2003年にカナダ・モントリオールで「Finore」、2004年にブラジル・リオデジャネイロで「Duo」、フィリップ・ドゥクフレ氏のスタジオでのレジデンスの後、2007年にフランスのシャイヨー国立劇場との共同制作である「Accumulated Layout」を発表。ベルギーのKunsten Festival、ロンドンのBarbican Centre、ローマのRomeEurope Festival、パリのポンピドゥーセンターなどヨーロッパを中心に世界各地の主要フェスティバル・劇場に招聘される。2008年にはパリのFestival d'Automne、ローマのRomeEurope Festivalとの共同制作作品、「Haptic」「Adapting for Distortion」をそれぞれ発表。また2009年からはダンサーへの振付を始め、初のグループ作品「1. centrifugal」を日本、フィンランドで公演、2010年にHip Hopダンサーと用いた「2. repulsion」を発表。
自身の作品では振付・ダンスのみならず映像・音・照明デザインまで担当し、「振付家、ダンサーというよりVisual ArtistでありMoverである」と評価され、近年はビデオインスタレーションなど表現活動を拡げており、ダンス以外の分野からも受け入れられている。
- プリ・アルスエレクトロニカの今回のご受賞について、一言お願いします。
- 自分がいつも活動しているところとは違うフィールドで評価を頂いたことに、とても驚いていると同時に、喜んでいます。
- 今回の受賞作品は何にインスピレーションを得たのでしょうか?
- 視覚的にダンスを見せるということに取り組んでいまして、この作品では錯覚をコンセプトにしました。
- ご自身を一言で言い表すとなんですか?
- 自分で自分のことを言い表すのは好きではありません。
- なぜこの道を志したのですか?
- 表現活動を通して人と共有したいものがあったからだと思います。
- 作品制作において、テーマにしていることはありますか?
- テーマということでありませんが、意味を考えるよりも、体で反応する作品を目指しています。
- 作品を創っている時以外の普段はどんなことをしていますか?
- 日常生活と、こういった事務作業です。
- アルスエレクトロニカはアートとテクノロジーと社会の融合領域における新たな表現を追求しています。あなたの作品とそれらの関係についてどのように思われますか?
- 僕はテクノロジーを使った表現を模索しているわけではありません。もし僕の作品がテクノロジー的な作品だと言えるのであれば、それが今の社会においてのテクノロジーの状況の反映だと思います。
間瀬実郎さん 長江トムさん DIRECTIONS,Inc.
HONORARY MENTIONS INTERACTIVE AER 受賞
作品タイトル i3DG
URL http://directions.jp/
email ann@directions.jp